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2023.03.16

ビジネスコンテスト最優秀賞! 日本の子育てを変える「習い事送迎MaaS」のビジョンと展望とは?

TOKYO STARTUP GATEWAY はテクノロジー、ソーシャルビジネス、地域課題解決などさまざまなジャンルにおいて、グローバルを見据えた起業家を「東京」から輩出しようというコンテスト形式のイベント。9回目を迎える今回は、2022年の4月からビジネスプランを公募し、1,114件のプランが全国から集まりました。それらの中から選抜された10名のファイナリストによるプレゼンテーションが行われ、見事、最優秀賞に輝いたのが、習い事専用シャトル運行システム「håb」です。
システム開発者である豊田洋平さんに開発エピソードや展望についてお話をうかがいました。

TOKYO STARTUP GATEWAY 

日本の子育てをMaaSで変える

今回、お話を伺ったのはhåb株式会社代表 豊田洋平さんです。東急株式会社の一員としてMaaS事業の推進に携わる傍ら、同社の副業制度を利用し、習い事専用シャトル運行システム「håb」を開発しておられます。

håb株式会社Webサイト

自身の送迎体験からプロダクトを着想

――習い事専用シャトル運行システム「håb」のコンセプトについてご説明いただけますでしょうか。

豊田さん 親御様の習い事の送迎ストレスをゼロにしていくというコンセプトで作ったプロダクトです。
送迎は、特に共働きの親御様にとっては非常に負担の大きな家事のひとつです。仕事を終えた後、夕食作りなどいろいろな家事をこなしながら車を出し、交通事故のリスクを抱えながら送迎している。習い事に通う子どもたちが相乗りして通うことのできる「送迎シャトル」を作ることができれば、家事の負担を軽減できるのではないかと考えました。

――送迎の課題に着目したきっかけを教えてください。

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håb株式会社 代表 豊田洋平さん

豊田さん 私自身が幼少期に送迎を経験しているからです。疲れた顔で車を運転する親の横顔がとても印象的で、ずっと頭に残っていたのがきっかけです。親御様へのヒアリングを重ねた結果、送迎課題は25年経った今も全く変わっていないということもわかりました。MaaS領域での事業開発に携わってきた私だからこそ、この課題に取り組むべきだという使命感が湧き、起業に至りました。
相乗りの送迎は、時間のマッチングやルート設計が非常に複雑になりますが、テクノロジーの力で実現できると信じて「送迎シャトル」を運用するために必要なプロダクトを開発しています。

お客様と向き合い、お客様が欲しいものを作る

――プロダクトの機能と工夫された点についてお聞かせください。

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豊田さん 「håb」のプロダクトは4つあります。
1つ目は、「親御様向けアプリ」です。お子様が乗り降りした場所と時間を確認することができます。
2つ目は、交通会社向けの「運行管理アプリ」です。予約情報に基づき送迎シャトルの運行ルートを決めます。また、膨大な運行報告書などの帳票類は全て自動で出力できるようにすることで、運行管理者の業務軽減を図っています。
3つ目は、送迎シャトルのドライバーを支える「ドライバーアプリ」です。これは、複雑なルートを間違いなく安全に運行するためのナビゲーションを行います。ドライバーが高齢化しているので、使いやすさを重視しました。

加えて、予約通りお子様が乗車したか照査します。乗車が確認できない場合は、親御様に連絡するのですが、こうした対応もシステムでカバーしています。
昨今、取沙汰されている置き去りを防止するための仕組みも用意しました。運行が終了したら車両後方にあるQRコードを読み込まなければ「ドライバーアプリ」を終了できない、つまり業務を終了できないようにすることで、必然的に車内にお子様が残っていないか確認できるようにしています。
4つ目は、「習い事事業者様向けアプリ」です。今日、誰が、何時に送迎シャトルでやって来るのか、また、走っている場所をリアルタイムで把握することができます。

――4つのアプリが連携して送迎シャトルを運行しているのですね。プロダクト開発の際、大切にした点などあればお聞かせください。

豊田さん お客様と向き合い、鮮度の高いお客様視点を持つ。自分が作りたいものではなく、お客様が欲しいものを作るという、あたりまえのことを忘れないよう心がけています。そのため交通会社、親御様、習い事事業者様、それぞれの現場の声に耳を傾け課題把握に努めています。
私は長年、東急でMaaS領域の新規事業立ち上げに携わってきましたが、、交通事業者様の現場ニーズや法整備の変化など、学ばなければいけないことは膨大にあります。また、親御様の安心につながるアプリの画面設計や通知の方法を一つ一つ丁寧に紐解いたり、習い事事業者様の送迎にまつわる課題を見つけ出したり、常に課題の鮮度を保ちながら開発しています。
また、エンジニアには、できるだけ親御様や習い事事業者様の生の声を伝えることで、お客様の距離を縮められるよう工夫しています。

やりたいことがたくさん!

――開発をしている中で出てきた気づきや、今後取り組みたいことはありますでしょうか。

豊田さん 親御様向けアプリにドライバーを評価できる機能を搭載することで、優良なドライバーをお客様と共に育成する仕組みや、習い事事業者様の収益拡大に貢献する仕組みを構築したいと考えています。
現在、習い事事業者様向けアプリは今日、誰が、何時に来るか、どこを走っているかが分かるシンプルなものですが、商圏の拡大に有効な集客ツールになり得ます。しかし、アプリを提供するだけでは真価を発揮することはできません。それにはマーケティングが必要です。習い事のメディアを利用した集客キャンペーンの展開など、マーケティング活動全般の支援も視野に入れています。
まだまだ道半ばですが、こうしたことを意識して開発に取り組んでいます。

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――送迎シャトルは様々な可能性が感じられます。その反面、開発側の範囲がどんどん広がっていき、大変なのではないでしょうか。

豊田さん そうなんです。やりたいことがたくさんあって開発のハードルが上がってしまい、本当に悩んでいます。日々、お客様と対話しながら、開発の優先度と重み付けを丁寧に行っているところです。直近では、送迎シャトルの「運行管理アプリ」の仕組みを利用して、すでに送迎車両を持っているスイミングスクールなどの運行ルートを引く手間を改善していこうと考えています。

根強いスポーツ部の送迎需要にも対応したい

――非常に注目を集めているシステムかと思います。具体的に、塾や予備校などの提携は進んでいるのでしょうか。

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豊田さん 送迎課題はわかりやすく、お子さんを持っている方にはすぐに伝わります。TOKYO STARTUP GATEWAY2022で最優秀賞をいただいた後、横浜市のスタートアップ推進事業にも採択され、おかげ様で大変を注目していただいています。様々な業種の事業者様からお問合せをいただき、具体的な企画をすすめているところです。

――塾や予備校以外でも活用できそうな予感がするシステムです。すでに活用を想定している分野はありますか?

豊田さん 横浜市の事業で絶対にやりたいと思っていることがあります。それは、プロスポーツチームの子どもスクール連携です。野球場や体育館などの大型施設は、駅から遠いところにあるため、スポーツ部の送迎需要は根強いのです。全国的に部活人口が減っているようですが、送迎シャトルがあればスポーツ人口の増加にも寄与できると思っています。

地域みんなで子供を見守る仕組みづくりを

――今後のMaaS事業についての展望をお聞かせください。

豊田さん 我々が作るシステム・アプリだけでは、送迎サービスは成り立ちません。仮想停留所での子供の見守りや助手席での見守りなど、システム以外のリアルな接点でのサービス設計が必要です。そのためには、保険会社様の営業所やガソリンスタンド、学校、学童など、既存のハードアセットをお持ちのステークホルダー様との連携が重要になると考えております。
また、運行コストの負担を親御様だけに頼るのではなく、習い事事業者様のマーケティングを支援したり、通勤手当のような形で<子ども送迎手当>をいただいたり、といった形で街全体で子供を見守りあう仕組みづくりに挑んでいきたいと思います。特に福利厚生への導入は重要と考えています。福利厚生のひとつとして企業に採用していただければ、企業価値が高まり人材の採用にも貢献することができます。社会全体で送迎シャトルを運行できたら、それは強固な社会インフラになるはずです。
「håb」が実現したいことは、行政、家族、企業の三者がメリットを享受できるサステナブルなサービス設計です。三方よしの思想に基づくサービス設計で少子化が改善され、企業が成長したり、教育産業が成長したりする。社会課題の解決に貢献できる未来につながると信じて、これからも開発を続けていきたいと考えています。

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――貴重なお話、ありがとうございました。

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