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2023.02.10

AIを活用したリクエスト型最適経路バス「MyRideのるる」が実証運行を経て本格運行を開始!

今回は、みちのりグループと茨城交通が茨城県高萩市と協力して運行しているリクエスト型最適経路バス「MyRideのるる」を取材しました。先進的な技術の活用と新規利用者拡大のための地道な取り組みが印象的でした。

先進技術で各地域の交通サービスを変革

企業紹介「みちのりホールディングス」

みちのりホールディングスは、青森・岩手・福島・茨城・栃木・神奈川・新潟県内の7つの交通・観光事業グループから構成されるみちのりグループの持株会社です。みちのりグループ各社はキャッシュレス決済やバスロケーションシステムの導入、MaaSの共通基盤の構築と展開、バスの電動化とエネルギーマネジメントシステムの構築などDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組み、ユーザビリティの向上やオペレーションの改善により生産性を高め、それによって地域公共交通ネットワークのサステナビリティの確保を目指しています。その中で、グループ全社で進めているのが、利用者のリクエストを受けてAIが自動生成した最適な経路とダイヤによってバスが走る「リクエスト型最適経路バス」です。

リクエスト型最適経路バス「MyRideのるる」
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MyRideのるる」は、みちのりグループと茨城交通が茨城県高萩市と協力して運行しているリクエスト型最適経路バスです。20217月から実証運行としてスタートし、エリア・時間帯を段階的に拡大して202210月に本格運行へ移行しています。

今回は、「MyRideのるる」を実際に利用してみました。

【体験レポート】高萩市の生活圏をつなぐ「MyRideのるる」

Mobilish編集部が実際にサービスを利用してみて気づいたことをレポートします。

アプリ利用が便利
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「MyRideのるる」は、決まったルートと時刻表がなく、バスを利用したい時にアプリか電話でリクエストしてバスを呼び出すサービスです。

今回は実際にアプリを使ってリクエストしてみました。アプリを開くと自分の現在地近くのバス停を見つけることができます。操作は直観的に行うことができ、非常に簡単です。また、一度の呼出で最大4人の同乗者を申し込むことができるため、それぞれ別々に呼び出す必要がありません。

アプリ画面では、バスがあと何分でやって来るか、バスの現在地とどのルートを運行するのかなどの情報をリアルタイムで確認できます。バスのルートはリクエスト直後から確認ができるため、バスが向かってくる方向と、道路のどちら側で待っていないといけないのかが一目瞭然でわかります。さらに、自分の現在地と乗車するバス停の位置、そこまでの徒歩ルートも表示されているので、バーチャルバス停でも、そこまで迷わずに移動でき、安心してバスを待つことができました。

待ち時間は5~15分程度

利用したい時にバスを呼び出せるサービスというだけあり、「呼んだらすぐに来てくれる」という印象。高萩駅での待ち時間は、たったの5分でした。

バスが来るまでの待ち時間は平均10数分とのことですが、リクエストが集中する時間帯や場所によってはそれ以上かかることもあるようです。リクエストをした際、複数の車両と待ち時間の候補が提示されるので、自分の予定に合わせて選ぶことができます。呼出後もアプリであれば、常に最新の車両の到着予定時間を確認できるので、それに合わせて用事を済ませればよいので便利ですね。

違うバスに乗らないように運転士が確認してくれる

バスに乗り込む際、バスの運転士が呼びかけてくれます。自分が呼び出したバスと異なる車両に乗ってしまわないための対策です。私は3人分をまとめて予約していたので、人数の確認もありました。

住民の生活圏に入り込んだバーチャルバス停

「MyRideのるる」では、通常のバス停に加えて、デジタルマップ上で確認できる「バーチャルバス停」という標柱の立っていないバス停も利用することができます。今回は、バーチャルバス停からも乗車してみました。まず1つ目は「高萩モール西」です。

「高萩モール西」は、食品スーパーや雑貨店、ホームセンターが集まった複合施設であるスーパーモール高萩の最寄りのバーチャルバス停です。定時定路線の路線バスの標柱バス停も近くにありますが、店舗の入口からは駐車場と道路を渡る必要があります。バーチャルバス停は店舗入口のすぐ近くに設置されているため、標柱バス停よりも便利です。

2つ目の目的地は「小島団地西」です。住宅が密集している団地ではありますが、定時定路線の路線バスは運行していないエリアです。「MyRideのるる」は、この団地内に複数のバーチャルバス停を設置しており、住民にとっては、路線バスのバス停よりも自宅から近い場所で乗降できることになります。

2023年12月からキャッシュレス決済を導入

取材時点では、運賃の支払手段は現金もしくは茨城交通発行のICカードでしたが、2023年12月頃からは茨城交通の路線バス全車両に各種キャッシュレス決済の導入が予定されています。現在の決済手段に加えてVisaタッチ決済や、QRコード決済が利用できるようになり、さらに利便性が向上します。

「MyRideのるる」について担当者にお話を伺いました!

株式会社みちのりホールディングス
・グループディレクター 大下 篤志さん(右)
・マネジャー 毛利 智さん(左)

――まずは、みちのりグループにおける「リクエスト型最適経路バス」事業についてお聞かせください。

大下さん:地域公共交通は、新型コロナウイルス感染症の拡大前からの慢性的な運転士不足の問題がある一方で、今後は運転免許を返納した高齢者や車の免許を持たない若者など、需要の増加が予想されます。
そうした状況に対応するために、みちのりグループでは様々なDXに取り組んでいます。それによって生産性の向上を図り、地域公共交通のサステナビリティの確保を目指しています。
その取り組みのひとつが「リクエスト型最適経路バス」の導入です。AIを活用することで、利用者のニーズを満たしつつ、より多くの相乗りを発生させて生産性を向上させることが可能となります。
一般的には「AIオンデマンド交通」と呼称されていますが、みちのりグループでは、利用者の視点でサービス内容が伝わりやすいように、「リクエスト型最適経路バス」という名称を使用しています。

対談1

グループディレクター 大下 篤志さん

――高萩市で「リクエスト型最適経路バス」を運行するにあたって、どのような期待が寄せられていましたか?

大下さん:高萩市内では、朝夕は通勤や通学で、自宅と鉄道駅を行き来する方が路線バスを利用しています。
一方で、日中は高齢者を中心に通院や買い物、公共施設利用などの市内移動が中心で目的地が分散しています。そのため、バスの時間が通院時間に合わなかったり、駅で乗り継ぎが必要になったりなどの不便性がありました。また、自宅が路線バスのルートから離れている利用者にとっては、バス停までの移動がバス利用を躊躇する一因になっていました。
これらの状況を解決するため、高萩市と茨城交通及び弊社が協力して、日中時間帯に運行するリクエスト型最適路線バス「MyRideのるる」を導入しました。リクエスト型最適経路バスであれば、乗降場所と移動時間が分散しても、効率的な運行ができます(図1)。

さらに、バーチャルバス停を多く設定することで、利用者は自宅近くで乗降できるようになりました(図2)。

大下さん:このようにして利便性を向上させることで利用者を増やして収入を確保しつつ、効率的な運行とすることで、持続可能な公共交通サービスとして成長させることを目指しています。利便性の高い公共交通サービスが継続的に提供されれば、高齢者の外出促進による健康寿命の延伸や、免許返納者の増加による交通安全の確保といった社会課題の解決につながると考えています。

――本格運行が決定した背景についてお聞かせください。

対談2

マネジャー 毛利 智さん

毛利さん:実証運行の開始以降、利用者数増加のために高萩市、茨城交通と協力して様々なプロモーションに取り組んできました。
例えば、周知向上のため、利用方法と全てのバス停の位置図を入れた案内パンフレットを作成して、市内全戸に配布しています。運行内容や利用方法の案内動画を作成してHPに掲載していますし、市役所ロビーのモニターでも見られるようにしています。定時定路線の路線バス利用者に対しては、導入前から車内とバス停に運行内容が変わることのお知らせの掲示や、利用マニュアルの配布などを行いました。土日祝日の利用が多くなる高校生に対しては、市内の高校の校内放送で紹介していただいたことが効果的でした。

――認知拡大のために地道な取り組みを続けておられたのですね。

毛利さん:こうした取り組みの結果、MyRideのるるの利用者は、本格運行への移行を検討した2022年8月時点で、導入前の同じ時間帯の路線バス利用者の1.3倍に増加しました。
また、利用者に対するアンケート調査では、約7割の方が満足しているという回答を得られました。さらに、マイカーからの転換、具体的には自分で運転していた方と送迎をしてもらっていた方が合わせて約2割を占めており、MyRideのるるがドアtoドアに近いサービスとして評価され、市民の外出機会の増加に寄与しているという結果が得られました(図3)。

このように、MyRideのるるが高萩市内における日常的な交通手段として定着しつつあり、今後も利用者数の増加が期待できると判断して、2022年10月に本格運行へ移行しました(図4)

――さまざまな取り組みが実を結び、本格運行移行につながったのですね。高齢者のアプリ利用促進については、多くのMaaS事業者様が工夫しておられます。みちのりグループ様としては、具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。

 毛利さん:スマートフォンを使えない・使い慣れていない高齢者の方を中心に、携帯キャリア会社が開催するスマートフォン教室のプログラムの中で「MyRideのるる」のアプリを紹介していただいたり、公民館など市の施設を借りて説明会を行ったりしました。
説明会では、アプリのダウンロードや初期登録のお手伝いをして、アプリの利用方法を説明しました。

説明会

▲説明会

また、大型商業施設や病院内に場所を借りて、定期的に茨城交通の社員がICカードの出張販売を行っています。

大型商業施設内でのご案内窓口

▲大型商業施設内でのご案内窓口

毛利さん:その際、アプリの利用方法などのサービス全般について何でも相談を受け付けています。そこで説明を受けた高齢者の中には、アプリの操作を習得され、電話からアプリ利用に切り替えられた70歳代の方もおられます。
このような取組みを繰り返し行うことによって、徐々にアプリ利用の割合が増えてきています。説明会や相談窓口での対応は継続して実施しています。

――事業を展開してから一定の時間がたった今、生まれた課題や改めて取り組みたいことなどありますか?

大下さん:現状は高齢者の利用割合が多いことから、平日は電話によるリクエストが約6割を占めています。そのため、スマートフォンに不慣れな高齢者のアプリ利用の促進が大きな課題です。
バーチャルバス停には標柱がないため、アプリを利用されていない方の中には、電話で案内された到着時間になってもバスが来ないと不安に思って場所を移動してしまったり、営業所へ電話をされたりする方もいらっしゃいます。そのようなことをなくすためにも、アプリ利用への移行をさらに働きかけていきたいと思っています。

毛利さん:また、サービスを持続して提供するためには、更なる利用者数の増加が必須です。新規利用者の獲得のためには、相手に合わせた情報提供の方法の検討や、「こんな時に便利に利用できる」といった具体的なシチュエーションの提案が必要です。今後も継続して高萩市、茨城交通と協力して利用者の増加を目指していきたいと考えています。

――今後の「リクエスト型最適経路バス」の展望をお聞かせください。

大下さん:高萩市のMyRideのるるはまだ発展途上ではあるものの、1年間の実証運行期間中、高萩市・茨城交通と共に様々なプロモーションに取り組んだ結果、以前の定時定路線バスの利用者数を上回り、一定の成果を挙げることができたと考えています。

対談3

特に、車利用の方や家族に送迎してもらっていた方がMyRideのるるを利用されるようになったことは、リクエスト型最適経路バスがマイカーに近い移動サービスとして、地域公共交通のサステナビリティにつながる有力な手段であることを示せたと考えております。
今後、さらなる利用者数の増加によって生産性の向上を実現したいと思っています。

――みちのりグループ全社として、今後取り組んでいきたいことはありますか。

対談4

大下さん:車利用の方にリクエスト型最適経路バスを利用していただけるようになったこと は大きな成果であり、このナレッジをグループ全社へ展開していく予定です。
地域公共交通ネットワークのサステナビリティを確保するためには、交通事業者が自らサービスを進化させて、利便性向上による利用者数の増加を図っていくことが重要です。そのためのひとつの手法として、グループ各社は管内の自治体に対して、最適経路バスの導入・活用を呼びかけています。
各自治体と協力して、従来の路線バスやコミュニティバスと組み合わせた導入や、全面的な最適経路バスへの切り替え、交通空白地域における新規導入するなど、地域毎に最適なサービスの形を検討し、それを実現できるシステムを選定して導入を進めていきたいと考えています。

――貴重なお話、ありがとうございました。

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