MaaS関連サービス

2023.12.26

供給不足や経営コスト上昇など「交通業界の課題」をDXで解決するシステム


タクシー業界と地方交通の問題を解消する配車システムが大きな注目を集めています。今回は、事業やサービス内容、今後の展望について、システムの開発と販売を行う電脳交通の代表取締役・近藤様にお話を伺いました。

お話をお伺いした方
株式会社電脳交通
代表取締役社長 近藤 洋祐 様

タクシー業界の内部コスト最適化を推し進めるビジネスモデル

――電脳交通の事業についてご紹介いただけますでしょうか?

近藤様:電脳交通には大きく分けて3つの事業があります。1つ目は、お客様のご注文とタクシーの在庫情報をマッチングする「タクシー配車システム」です。2023年11月現在、46都道府県のタクシー車両に搭載され、タクシー業界のDX化を支え、インフラのような存在になりつつあります。

2つ目が、タクシー配車に特化したコールセンター業務です。タクシー会社様がそれぞれで内製化していた配車業務を代行するというもので、お客様からの配車依頼を受けてタクシーを手配するということを行っております。

3つ目は公共交通向けのシステム提供です。オンデマンドバスや乗り合いタクシーなど、日本全国で住民の需要に合わせた新しい公共交通が誕生しています。そういった新しい公共交通の仕組みに必要なシステム開発を行っております。

――多くの交通事業者様に必要とされる電脳交通の事業はどのようにして生まれたのでしょうか。

近藤様:2010年、私は実家のタクシー会社を継ぎ、廃業寸前だった家業の再建に取り組むことになりました。その際、タクシー業界がいかにアナログでローテクなオペレーションしているのか、目の当たりにしました。そこで、まずは実家のタクシー会社のオペレーションを改善できないかということを考え始めたことがきっかけです。

ドライバー不足が加速するタクシー業界内において、我々の作るシステムが近い未来で必要なものになることは、開発を進める課程で確信していました。そこで、タクシー業界他社様でも使えるような再現性のあるシステムの開発や、タクシー業界の内部コストを最適化するためのビジネスモデルの構築に着手しました。

供給不足が深刻な交通業界の課題を解決するサービスの構築

――クラウド型の配車システム「DS」の導入数が急速に増えている理由はどのような点にあるとお考えですか。

近藤様:最新・高品質のシステムを低コストで利用できるという点に魅力を感じていただいているのだと思います。

お客様と空車のタクシーをマッチングするというシステム自体は以前からタクシー業界にありましたが、設備が高額であったため、中小零細企業では導入が難しいというのが現実でした。「DS」はクラウド型ですので、パソコンとネット回線とタブレットがあれば簡単に導入でき、導入時のコストを抑えることができます。

また、クラウド型でシステムを提供することにより、常にアップデートされた最新の状態のシステムをご利用いただけます。絶えず進化している現在の交通業界において、スピード感は絶対的なものです。

――管理システムではどのようなことができるのでしょうか。

近藤様:お客様の電話番号をID化して、そのIDに紐付けてこれまでの乗降場所やお客様の特徴など顧客情報の管理ができるようになっております。また、配車のマッチングは手動ではもちろん、システムに任せて自動化することも可能です。システムのマイナーアップデートは年間1000回ほど。タクシー会社ごとに存在する配車ロジックに細かく対応できるよう、かなりの数のパラメータを準備しております。パラメータを調整することで、ベテランの配車担当者と変わらないレベルの判断ができるようになります。

また、DSは外部サービスとの連携させることが可能です。まだ、配車依頼の多くは電話経由ではありますが、最近はアプリからの依頼も増えております。「DS」は外部の配車予約システムとAPI連携させることで、アプリ経由の予約を同じシステム内で管理できます。



――配車業務の代行サービスの魅力を教えてください。

近藤様:配車はもともとそれぞれのタクシー会社が内製化してきた業務なのですが、慢性的な人材不足や配車センターの運営コストの逼迫が問題視されていました。協同組合を立ち上げて配車センターを運営するという取り組みもあったのですが、透明性や正確性の担保が難しかったり、固定費の負荷が大きかったりという理由で、体制維持ができなかったという経緯があったようです。

電脳交通のコールセンターでは、配車に関するすべてのログを残せるようにして、透明性を担保しました。また、システムにGoogleやゼンリンの地図を連携させることで、土地勘がなくても正確に配車することが可能です。さらに、弊社のコールセンターでは、オペレーターがエリアに縛られず複数社分の配車依頼に対応することでコストを抑えています。



――サービスを導入する際の流れや確認事項を教えてください。

近藤様:最初に困りごとなどを聞かせていただき課題を洗い出したうえで、ソリューションの提案をするようにしております。

配車システムの導入時は、会社ごとの配車ルールを把握してロジックを整理したうえで管理システムをチューニングします。早ければ数週間程度でシステムの利用を開始していただけます。

配車業務の代行サービスを利用いただく際は、オペレーターの確保が必要になりますので、対応時間と想定の着信数を確認します。また、効率の良い配車につなげるため、ドライバーの特性や車両数などをデータ化してシステムに反映します。最初のヒアリングから運用開始までの準備期間は平均3ヶ月程度です。

――サービス導入による企業や自治体のメリットについてお聞かせください。

近藤様:一番のメリットは業務の工数が削減でき、効率化ができるというポイントかと思います。

コロナ禍を経て、ドライバーの数は減っている一方で、タクシーの利用はますます増えており供給不足問題に陥っております。業界問わず人手が足りていない状況ですので、乗務員数や車両数を増やすということは困難。業務を効率化することで供給を増やす必要があります。

電脳交通が提供する配車システムを導入することで、一部の業務を自動化や効率化することが可能です。自社の強みや弱みがデータ化されて可視化されるため、データドリブンな経営判断が容易になります。例えば、データ解析機能を活用することで、マッチング成功率や、エリア別の需要などが分かります。また、乗務員ごとに、非効率な走行をしてないか、配車のリクエストにどれだけ反応しているかなども可視化されます。

配車システムを通して日本の交通課題の解消に挑む

――日本のタクシー業界およびMaaSの発展において、貴社が果たす役割についてどう考えでしょうか?

近藤様我々はタクシー業界をはじめとする交通のDXを推進することで、現在の深刻な供給不足問題を解消したいと考えております。効率的な運行やマッチングの実現によって利用者数の増加に対応できる環境を作ることが、まずは現時点で取り組むべきテーマです。

――今後の展望を教えていただけますでしょうか

近藤様いくつかありますが、ひとつはタクシー業界における配車システムのシェアNo.1の実現と株式上場です。まずは、着実に交通業界のDXを推し進め、利用者数の増加に対応できる環境を作ることが、現時点で取り組むべきテーマだと思っています。

次に、国の課題として掲げられている、昨今の「交通空白地帯の解消」への取り組み。過疎化が進む地方を中心に、採算が合わないという理由でバスや鉄道が廃線したり撤退したりということが起こっています。そういった課題を解消するために、ライドシェアを拡大する動きがでてきているのですが、まだまだ供給の安定化には至っていないのが現状です。現在、電脳交通では産官学で連携しつつ持続可能な交通のシステムを構築しております。私どもが提供するシステムの導入を通じてライドシェア運行のサポートもしていきたいと考えております。

そして、ゆくゆくはこのシステムを日本発のモデルとして海外に展開することが目標です。

――貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。さらなるご活躍を楽しみにしております。

株式会社 電脳交通

【会社名】 株式会社 電脳交通
【設立】 2015年12月17日
【所在地】 徳島県徳島市寺島本町西1-5 アミコ東館6階
【事業内容】 タクシー配車システム開発・提供、タクシー会社の配車業務受託運営サービス

株式会社 電脳交通

独自に開発したクラウド型配車システムや配車センターなどのサービス提供を通じて、全国の交通事業者様の課題解決をサポート。交通のDX推進のみならず、脱炭素社会実現を目指したEV車両による実証運行など、日本のMaaS事業を成長させる取り組みにも積極的に参加しておられます。

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