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2023.12.20

「EVolity」―商用EVの導入・運用を一元的に支援

 丸紅とパナソニックホールディングスが商用EVフリートマネジメントサービスを提供する新会社「EVolity株式会社」を設立し、商用EVの普及に取り組んでいます。今回は、新会社設立の経緯やEVフリートマネジメントサービスの特徴、今後の展望についてEVolity株式会社の中根様と四元様にお話を伺いました。

お話をお伺いした方

EVolity株式会社 
執行役員CSO 中根 史敬 様
ジェネラルマネージャー 営業・企画 四元 大志 様

互いの強みを活かして合弁会社を設立

——はじめに、EVolityはどのようなサービスを提供するのでしょうか。

中根様 EVの導入・運用にあたり事業者様が向き合う課題の解決を、一元的に支援することを目的としています。

EV導入に必要な要素は様々あります。具体的には、必要な車両台数とコストの算出、導入先拠点の優先順位付けといったコンサルティングから、貸出車両によるトライアル、車両や充電器の選定・調達の支援、充電インフラ整備や車両・充電管理システムの提供と、幅広くサービスを提供しています。

将来的にはEV・電池の二次利用・リサイクルも事業領域とし、循環エコシステムの構築を目指します。


——EVolityの設立に至った背景や目的を教えてください。

四元様 丸紅では、海外でフリートマネジメント事業を行い知見を蓄積しています。国内でもEV普及を事業機会ととらえ、周辺領域を含むビジネスを行っています。EVのバリューチェーンを構築する為には充電や車載電池に関する管理が重要になると考え、パナソニックに声を掛けました。

中根様 パナソニックは2018年に創業100周年を迎え、さらに100年後も続く会社となるために新規事業創出に取り組んでいます。そのひとつがモビリティ領域です。モビリティ事業戦略室を立ち上げ、EV普及が先行する中国を皮切りに、EV向けのサービス事業を展開しています。
一方、日本に目を向けると、EV車両そのものの普及がこれからという状況です。解決すべきはEV導入のファーストステップにおける課題であることに気づきました。自社に蓄積しているEVの知見をビジネスに昇華させるには営業力のあるパートナーが必要と考えていたところに、丸紅から声が掛かったのです。何度も話し合いを繰り返す中で、お互いにミッシングピースを埋め、思いをひとつにして共にビジネスを作り上げていく関係を築けると判断して新会社の設立に至りました。

商用EVの普及を阻む4つの課題

——商用EVの導入・運用にあたっては、どのような課題があるのでしょうか。

中根様 大きく4つあると考えています。

1つ目は、EV車両そのものの性能、特に航続距離の問題です。上り坂を走ったり、荷物を沢山積んでいたりすれば沢山の電力を使うので、一度の充電で走れる距離が短くなります。

こうしたことから、事業者様の運用に合ったEV車両を選ぶ事が重要です。しかし、日本で使えるEVのラインナップはまだこれから充実していくという段階であるため、結局、何を選べばいいのか悩んでしまう、というのが現状です。車両性能を考慮した導入計画の策定や、運用の設計が課題となります。

2つ目は、経済性です。車両価格が高い上に充電器も導入するとなると、初期費用がかさみます。一方で、ランニング費用はガソリン車よりEVの方が安価です。コストを抑えた運用ができるか、経済合理性を見極められるかが課題となっています。

今、国や地方自治体もEV導入を推進しようと補助金を用意しているので、これをうまく活用することも事業者様の視点として重要と考えています。

3つ目は、充電インフラです。2種類の充電形式(普通充電と急速充電)を事業者様の運用に合わせてどう使い分けるか。物流拠点に充電器を設置する場合、必要な電力をいかに確保するかといった検討も必要です。電力設備の増強が必要な場合、賃貸物件であれば物件のオーナーとの交渉も行わなければなりません。

4つ目は、運用・管理です。

同時に何台も充電すると電力を多く消費するため、電気代を抑えるための工夫が必要ですし、事業者様が日々の業務を滞りなく行うためには、充電漏れがないよう確実に充電しなければなりません。また、運用台数が少なければ課題となりませんが、複数台運用時にはピークを抑える充電管理をすることが電気代にとても大きなインパクトを及ぼします。

電池に関しても同様で、電池が劣化すれば航続距離が短くなりますし、電池残量を確認したいというご要望もあります。

運用・管理は、充電器と車両の台数が増えれば増えるほど難しくなるのです。その為充電器と車両の運用・管理をデジタルツールで効率的に行うことが求められます。


導入・運用の課題を解決するEVolityのサービス

——EVolity の提供するサービスについて詳しく教えてください。

中根様 今申し上げた様々なお困りごとを一元的にサポートするのが、EVolityのサービスです。事業者様ごとに異なるEV車両の導入・運用の課題を理解し、それぞれにあった解決策をご提案します。

私たちはカーメーカーや充電器メーカーではありませんから、様々なパートナー企業と連携してマルチブランドのEV車両や充電器を取り扱います。ブランドにとらわれることなく、事業者様の視点に立った提案ができることは、私たちの特徴であり、大きな強みと言えます。

事業者様が調達した車両や充電器に対しても管理システムを構築することができます。現在、幅広い車種、充電器に対応できるよう注力しているところです。

電池管理も特徴のひとつです。パナソニックが培ってきた知見・技術を大いに活かせる領域です。電池の健康状態の把握にとどまらず、日々の管理データを活用して電池の劣化を予測して電池の価値の最大化を図ること、さらに二次利用の可能性を探り、循環できるビジネスモデルを構築することを目指しています。


——今、相談が寄せられているのはどのような業界ですか?

中根様 多いのは物流業界です。多数の車両を運用することが事業の生命線とも言えますし、荷主企業や株主からも脱炭素が求められている事業者様も多くいらっしゃいます。

――その中でEV車両を既に持っている事業者様はありますか?

中根様 数千台、数万台のEV導入を目指しておられる事業者様はもちろんのこと、まずは数台からトライされているケースも多くあります。

四元様 先ほどお話しした課題のために、事業者様はEV車両の台数を増やしにくい状況にあります。そうした課題を解決して事業者様の車両のEV化を進めるためにも、EVolityのサービスを通じてノウハウを蓄積していくことが必要と認識しています。

——ノウハウはどのように蓄積していくのですか?

中根様 事業者様のお困りごとを聞き、お客様のオペレーションに合わせた解決策を考え提案していくことに尽きると思います。幅広い事業者様やパートナー企業と接することで、あらゆる事業環境・オペレーションに対応したノウハウを蓄積しています。

丸紅の営業基盤を活かし多くの事業者様にアプローチできています。これにより課題が立体的に見えてきました。また、お困り度合いも異なる中で、本当に解決しなければいけないポイントも見分けられるようになってきています。

四元様 丸紅には、充電器の販売や再生エネルギー事業など、EVに関係するビジネスが多数あります。そこから得た知見を活かすこともできます。


——管理システムの機能や構成について教えてください。

中根様 どんどん進化させていくことが前提ではありますが、まずは主に2つの機能を提供します。
ひとつは、車両・電池の状態を管理する機能です。車両の位置や速度といった運行状況の把握と、電池の残量や劣化度のリアルタイムモニタリングです。マルチブランドのEV車両に対応しています。

もうひとつは、充電管理です。充電ON/OFFの見える化、充電量の記録、ピーク分散といった機能です。こちらもマルチブランドの充電器に対応しています。

EV特有の課題を解決してエンジン車と変わらない使い勝手を実現するには、遠隔での管理システムをいかに構築するかがひとつの答えだと考えています。

今後は、事業者様の声を聞きながら対応する車種や充電器を増やすとともに、事業者様が既にお持ちの配送管理システムや施設のエネルギーマネジメントシステムとの連携も検討しているところです。

商用EVを本格導入する前にトライアルの機会を提供

——サービス導入のステップや検討事項を教えてください。

中根様 EVの導入を検討している事業者様の場合は、トライアルをお勧めしています。実際に自社の業務で使ってみるとEVの良いところや課題が見えてきますから、課題に対して解決策をご提案し、導入となります。

導入に当たっては、中長期的な計画が重要です。車種比較、コスト算出、どの拠点から導入していくかといった優先順位付けなどをご支援します。

実際の運用が始まってからは、システム管理が重要となります。車両や電池の運用管理をリモートで効率的に行います。

——サービスの提供エリアは?

四元様 エリアは日本全国です。

西日本や沖縄の事業者様ともお話ししています。EVには、“暖かい地方の方が導入効果が高い”という特性があるんですよ。

——モバイルバッテリーもそうですね。北の寒さはEVにとって厳しいのでしょうか。

四元様 そうなんです。寒いと電気の出力が弱くなりますし、充電にも時間が掛かります。エアコンを使う分、航続距離が短くなります。世界の例を見ても寒冷地での運用は課題が多いと認識しています。

中根様 確かに、寒冷地でのEV運用は難しいのですが、厳しい環境における運用方法も課題を整理して対策していかなければいけないと思っています。寒冷地でも我々のサービスを入れて頂くことで、本格導入に向けた課題整理が可能になると考えます。


導入→運用→二次利用まで、すべてを任せたいと思っていただける会社に

——今後の商用EVの発展において貴社が果たす役割については、どのようにお考えでしょうか?

中根様 全車両EV化を目指す事業者様は多いのですが、数百台、数千台となると一気に導入のハードルが高くなります。事業者様に寄り添いながら共に考え支援する必要性を感じています。一つひとつ課題を解決し、着実に実現させていくことが商用EVの普及・発展につながると思っています。

四元様 社会が脱炭素を掲げる中、自動車メーカー、充電器メーカーをはじめ様々な企業がEV関連の製品やサービスを提供するようになり、EV普及の土台が整ってきています。丸紅として、パナソニックとしてではなく、両社の知見も活かしながらも独立事業体であるEVolityとしてお客様目線でハードウェアには拘らずサービス提供していくのが私たちのスタイルです。お客様、パートナー企業様には、この記事を見て、私たちにお声掛けいただけたら嬉しいですね。


——最後に、今後の展望やチャレンジ、サービス展開についてお聞かせください。

四元様 EVの導入・運用についてはもちろん、EVに関するあれこれはすべてEVolityに任せようと思っていただける会社になることを第一の目標として日々の活動に取り組んでいます。

中根様 物流企業に限らず、サービス車両や営業車両など様々な商用車両のEV化に貢献したいと考えています。まずは、脱炭素経営を推進する企業の課題を一つひとつ解決しながらEV導入を実現させていきます。加えて、社会全体で継続的にEVを活用してくためには、二次利用を含めたエコシステムの構築が不可欠と考えています。この点においては、電池の管理ができるという強みを活かしながらパートナー企業と共に取り組んでいきたいです。

さらに、将来的には日本だけでなく海外、特に東南アジアにも事業展開をしていきたいと考えているところです。日本よりも早くEVが普及する可能性もあると見ています。


——これからも商用EVの普及に貢献する貴社の取り組みを応援したいと思います。本日はありがとうございました。 


導入にステージに応じたソリューションを提供


「EVolity」提供会社

【会社名】EVolity株式会社
【設立】 2023年8月1日
【所在地】東京都中央区銀座8丁目21-1 住友不動産汐留浜離宮ビル6階
【事業内容】商用EV向けフリートマネジメント事業(車両・電池・充電管理サービス)、充電インフラ事業

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