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2023.01.24
今、大阪で気になる存在、オンデマンドバスを体験。Osaka Metro様にも突撃インタビューしてきました。
2021年3月から運行を開始したOsaka Metro Groupのオンデマンドバスについて、担当者様にお話を伺いました。また、実際にサービスを利用してみた感想をレポートします。
大阪市民の移動を支えるOsaka Metro Group
オンデマンドバスを利用して梅田周辺を散策
実際にMobilish編集部員が大阪市内でオンデマンドバスを利用してみました。
予約はOsaka Metro GroupのMaaSアプリ「e METRO」から
Osaka Metro Groupが提供するスマートフォン用アプリ「e METRO」は、大阪市内の地下鉄運行状況、乗換検索、オンデマンドバス予約等の機能を備えています。オンデマンドバスの予約方法は、アプリと電話の2パターン。
初回は、アプリを使って予約をしてみました。 まずは、出発地と到着場所をマップから選び、利用日時を設定し検索します。今回は「梅田スクエアビル」から「グランフロント大阪」までの区間で設定して検索し、予約しました。操作方法はタクシーの配車サービスとほとんど変わらず、利用が初めてでもスムーズに予約できました。
場所や時間によっては、必ずしも希望時間ぴったりに配車予約できるわけではないので、早めに配車予約をしておくと安心です。
施設やビルがバス停代わり

時刻表や看板は立っていませんが、乗降場所の名称に施設名やビル名がついており、その建物が目印になります。また、詳しい乗降場所の位置はアプリでも確認できます。しばらく待っていると、車体に指定の番号が記されたバスがやってきました。
予約番号を伝えて乗車
乗車時はバス運転手に予約番号を伝え、運賃の支払いが完了したら出発。前後の座席の間隔は広々としており、路線バスの車両にあるような足元の窮屈さはありません。買い物帰りで荷物がたくさんあっても、他の乗客を気にすることなくゆったり座れそうでした。
今回利用したバスは、他に乗客がいなかったため、乗車場所から到着場所まで一度も停車することなく運行。乗車1回300円とは思えない、便利さと特別感がありました。
お客さまからのご要望を反映した事業活動を展開
大阪市高速電気軌道株式会社 交通事業本部 都市型MaaSモビリティ部 次世代モビリティ企画課係長・渡邊 真郷様に、オンデマンドバスやMaaS事業の展望について伺いました。
オンデマンドバス運営について
――まずは、Osaka Metro様におけるオンデマンドバス事業についてお聞かせください。

渡邊 真郷様
渡邊様:Osaka Metro Groupでは、“都市型MaaS構想「e METRO」”を推進しています。これは「既存交通の改善・進化」「移動手段の統合」「生活サービスの拡充」「Webサービスの提供」と、各施策に共通で必要となる「デジタル化の推進(DX)」の5層で構成する事業構想となっています。この“都市型MaaS構想”の核となる事業として、オンデマンドバス事業を位置付けています。
オンデマンドバスは、定時定路線の路線バスとは違い、お客さまに乗車日時や乗降場所をご指定いただくことで、お客さまのニーズに応じて運行する新しいスタイルの乗り合いバスです。2021年3月から準都心・郊外型地域の生野区と平野区、2022年4月から都心型地域の北区・福島区で運行を開始しています。
――生野区から運行を開始したのには何か理由があったのでしょうか。
渡邊様:事業の可能性を探る社会実験ですから、エリアの選定は熟慮しました。大阪市には24の区がありますが、梅田・難波といった都心と準都心・郊外とでは交通事情や街づくり、住民の構成等に違いがあります。地域の交通利便性に改善の余地があり、オンデマンドバスに対する一定の需要が見込まれるエリアを選びました。
生野区・平野区で1年間運行して継続の目途が立ったところで、都心部の北区・福島区に運行エリアを広げました。
――大阪市民の声を反映した事業だとお伺いしました。実際には、どのような声があがっていたのでしょうか?
渡邊様:「安価でもっと自由に移動ができるサービスが欲しい」というお声があがっていました。地下鉄や路線バスは大阪市内で多数運行しておりますが、既存の交通は点と点を線で結んでいるイメージで、エリアを面的にカバーできているかというと、必ずしもそうではありませんでした。
大阪市内の交通は、地方と比較すると充実している印象があるかもしれませんが、高齢者、障がい者、公共交通網が手薄なエリアの住民等にとっては、自由に移動できない場面もあります。
我々としては、エリアを面的にカバーするということが、都市型MaaS構想実現のカギになると考えています。タクシーよりも安価で、路線バスよりも自由に使えるオンデマンドバスは、そのために最適なモビリティだと考えています。
オンデマンドバス事業のハードルと課題
――大阪でオンデマンドバス事業を展開するにあたって、ハードルはありましたか?
渡邊様:これまでグループで路線バスの運行をしてまいりましたが、都市部でのデマンド型交通の運行については経験がなく、大きなチャレンジでした。そのためいくつかハードルも存在しました。
まずひとつは、路線バスとオンデマンドバスは同じ”バス”ではありますが、根拠となる制度・手続き等が異なるため、運行開始に向けた準備や調整には手探りの部分があり苦労しました。
また、新しいサービスについてご利用者の皆様に正しく理解いただき、いかにして交通機関として定着させていけるのか、ということも課題でした。予約して利用するというオンデマンドバスの特性上、タクシーと同じ感覚で利用される方もいらっしゃいます。オンデマンドバスは、路線バスと比較すると自由度は高いものの、タクシーほどの柔軟性はありません。乗り合いでご利用いただくサービスであることを理解いただきつつ、併せてオンデマンドバスの利便性(タクシーよりも安価に利用できるという点)も訴求していく必要があります。持続可能なサービスとして提供する上で、この理解を得ることも重要であると考えています。

――MaaS事業では、利用者様のアプリ利用について課題を持つ事業者様のお声を聞くことがあります。Osaka Metro様としてはいかがでしょうか?
渡邊様:アプリを使い慣れている方にとっては、直感的な操作が可能なため、非常に利便性が高いといえます。一方で、高齢のお客さまやアプリ操作が苦手な方、スマホを持っていない方がいらっしゃるのも事実です。
公共交通を運営する事業者として、たとえ少数だからと言って利用者を切り捨てるわけにはまいりません。どなたでもご利用いただけるよう、Osaka Metroではお電話でも予約ができるようにしています。
――アプリと電話の利用者数の割合を教えていただけますでしょうか?
渡邊様:全体の予約数のうち、1割弱が電話です。それぞれのエリアで分けると、生野区・平野区では1割程度、北区・福島区では数%が電話による予約です。
高齢のお客さまの中には新しいサービスへの抵抗感がある場合が多く、利用数としてはまだまだ少ない印象です。先に運行を始めた生野区・平野区では20~50代まで利用が広がっているのに対し、北区・福島区では30~40代のお客さまが最も多いのが現状です。今後、客層が広がることで電話予約の比率が高まる可能性もあると考えています。

――事業を展開してから一定の時間がたった今、改めて取り組みたいことなどありますか?
渡邊様:サービスリリースから日が浅いということもあり、AIでの配車の仕組みからサービス内容にいたるまで、まだまだ完成されたものではありません。お客さまの声を聞きつつ、大阪市等の関係者とも協力してより良いサービスにしていきたいと考えています。
一方で、持続可能なサービスにするためには、事業性も担保する必要があります。バランスの良い運営に取り組みたいです。
MaaS事業の展望
――2025年大阪・関西万博に向けた次世代MaaS事業についての展望をお聞かせください。
渡邊様:2025年は当社を含め、大阪にとって大きな節目となります。地下鉄中央線の延伸や自動運転の取組み等も控えていますが、オンデマンドバスについても関係者と十分協議の上、運行エリアの拡大を段階的に進め、少しでも多くの市民に利用してもらえるようにサービスを広げていきたいと考えております。
――貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
新たなサービスをリリース
さらに進化を続けるOsaka Metroのオンデマンドバス。新たに2つのサービスがリリースされ、利便性が大幅にアップしました!実際に利用してみた感想と併せてご紹介します。
顔認証乗車サービス(生野エリア限定)
乗車時の本人確認を顔認証で行うサービスです。操作はたったの2ステップ。車両の入り口付近に取り付けられたタブレットの「認証開始ボタン」を押下して、カメラに顔を向けるだけで認証が完了します。運転士にアプリ画面を見せて確認してもらう手間が短縮されたことで、手間も時間も省けます。
なるほど、これは次回以降も必ず使用したいと感じるお手軽さ。鞄やポケットからスマホを取り出す必要も、アプリから確認画面を探して提示する必要もありません※。このサービスは、事前にe METROの会員WEBサイト内で顔画像を登録しておくだけで利用できます。
※モバイルチケットを利用する場合は、顔認証後にアプリ内にあるチケットを提示する必要があります。
顔認証乗車サービスについては詳しくは<こちら>。
オンデマンドバス呼出インターホン&呼出専用電話(生野・平野A/Bエリア限定)

誰でも簡単かつ手軽にオンデマンドバスを利用できるように導入されたサービスです。専用電話は受話器を持ち上げるだけ、インターホンはドアホンのような感覚でボタンを押すだけで簡単にコールセンターにつながります。さらに、通話料は無料です。手順書も準備されており、スマホやアプリに不慣れな方でも安心して利用できます。
また、インターホンと電話は主に駅やバス停に設置されているため、「今すぐ呼び出したい!」と感じたときにすぐコールセンターに連絡できる利便性があります。
オンデマンドバス呼出インターホン&呼出専用電話について詳しくは<こちら>。
渡邊様の「公共交通を運営する事業者として、たとえ少数だからと言ってお客さまを切り捨てるわけにはまいりません」というお言葉通り、Osaka Metroのオンデマンドバスはすべての利用者にとっての利便性向上のためにサービスを進化させているのだと感じました。今後の発展も非常に楽しみです!