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2026.03.23

川越市周辺地区の交通ニーズに応える デマンド型交通「かわまる」(埼玉県川越市)

埼玉県川越市

埼玉県のやや南部に位置する人口約35万人の市。江戸時代から城下町・市場町として栄え、蔵造りの町並みが連なる「一番街」や時計台として親しまれる「時の鐘」など、江戸の面影を色濃く残すことから「小江戸」の愛称で広く知られる。特産品としてサツマイモやウナギ、地ビールが人気を集める。都心から30km圏内で生活利便性と落ち着いた住環境を両立するエリア。交通面では、JR川越線・東武東上線・西武新宿線の3路線が市内を経由し、池袋や新宿へ乗り換えなしでアクセスできるほか、路線バス「川越シャトル」やデマンド型交通「かわまる」が市内の交通空白地域をカバーし、鉄道沿線から離れた地域の市民の移動手段としても機能している。

お話いただいた方

川越市 都市計画部 交通政策課

公共交通担当 主査 神谷 翔 様

中心部を除く3地区で運行

――川越市のデマンド型交通「かわまる」について教えてください

「かわまる」は、利用者の予約に応じて運行時刻や経路を変える予約型の乗合交通で、年末年始を除いて毎日、午前8時から午後6時まで運行しています。運行区域は、川越市の中心部を除いたエリアで、地区1~3に分けて運行しています。市の中心部は、鉄道や路線バス、タクシーといった既存の公共交通が充実しているため運行していません。また、地区をまたぐ利用はできません。

運賃は、中学生から69歳までが500円で、子どもの場合は小学生が300円、未就学児が無料です。70歳以上の高齢の方、障害者手帳をお持ちの方、介護者は300円(障害者手帳をお持ちの小学生は150円)です。同乗の場合は未登録でも500円で利用できます。

利用するためには、利用者登録が必要です。電話やインターネットで予約し、日時と乗降場を指定して利用します。乗降場は3つの地区合計で約370カ所あります。

サービス名については公募し、230点の応募の中から川越市交通政策審議会にて審査を行った後、市内の小学校4~6年生による投票により決定をしました。

――対象となる地域の特徴を教えてください

市の中心部を除く周辺の3つの地区が運行エリアです。

地区1は、産業拠点である川越工業団地及び川越第二産業団地のほか、貴重な自然環境資源である伊佐沼、スポーツ拠点である川越運動公園、広域医療を支える埼玉医科大学総合医療センターなどがある芳野地区、地域核である南古谷駅や商業レクリエーション施設、大学などが立地している古谷・南古谷地区があります。

地区2は、地域核である新河岸駅がある高階地区、広大な畑作地帯が形成され、地区面積の約8割が市街化調整区域である福原地区、川越狭山工業団地や川越インターチェンジがあることにより自動車での交通利便性が高い大東地区があります。

地区3は、生活核である的場駅、笠幡駅の他、豊かな自然環境に囲まれた集落地が形成されている霞ケ関地区、緑豊かな公園が多くある川鶴地区、商店街、大学などが立地している霞ケ関北地区、地域核となる霞ケ関駅がある名細地区、地区面積の8割以上が市街化調整区域である山田地区があります。

今後、市全体の人口減少や高齢化が進む中、既存集落の交通手段を確保することで、生活圏を維持していくことが必要です。

交通空白解消に向け継続的に協議

――デマンド型交通導入を検討されてきた経緯について教えてください

本市では、鉄道や路線バスではカバーされない地域の移動手段として、路線の改廃を繰り返しながら市内循環バス「川越シャトル」を運行してきましたが、依然として交通空白地域(鉄道駅800m圏、バス停300m圏以外のエリア)が残っていました。

市が運行している定時定路線の「川越シャトル」では、人口密度が低い交通空白地域を運行することは非効率となるため、民間の路線バスや川越シャトルが運行していない交通空白地域における市民の移動手段の確保のため、平成29年度(2017年度)に川越市交通政策審議会において、新たな交通施策の導入について審議が行われました。

その中で、対策手法、サービス対象地域、対象者、運行時間、料金等について審議いただき、交通空白地域における市民の移動支援を目的として、公共交通機関が充実している市の中心部を除き、デマンド型交通を導入する旨の答申を平成30年(2018年)4月にいただき、翌年(2019年)2月から「地区3」にて運行を開始しました。

その後、令和2年(2020年)2月に地区2、同年12月に地区1にて運行を開始し、現在、市中心部を除く全域で運行しています。

――本格運行が始まる以前に、別の枠組みのデマンド型交通も検討されていたのですね

川越シャトルの路線延伸に伴う市の財政負担軽減の観点から、川越シャトルの利用率が低い路線を廃止するなど、平成25年(2013年)度にそれまでの19路線を13路線にする大幅な見直しを行いました。

この路線見直しにより生じた一部の交通空白地域において、デマンド型交通の実証実験を平成25~26年度に実施しましたが、利用者数が低迷し、本格運行には至りませんでした。

一方、市民意見箱やタウンミーティング等においては、高齢者などの交通弱者に対する移動手段についての要望が寄せられていました。これらの状況を踏まえ、平成28年(2016年)度に関係部署で構成する庁内検討委員会において、交通空白地域の新たな交通手段の方向性について検討を行い、現在の「かわまる」の運行スタートに至りました。

――本格運行に先立ってどのように準備を進められたのでしょうか

当時はそれほど多くはありませんでしたが、県内で人口規模が川越市と同程度の市で、デマンド型交通を導入している自治体を参考にしました。

運行事業者の選定においては、地区ごとに公募型プロポーザルを実施し、市内事業者であるダイヤモンド交通株式会社が選定されました。選定のポイントとしては、日々の運行実績や管理体制、乗務員研修などの実施状況、デマンド型交通の事業実績などを考慮して総合的に判断しました。予約受付、運行管理、配車業務等を一括して運行事業者に実施いただいています。

システムは、順風路株式会社のAIオンデマンド型交通システム「コンビニクル」を導入しています。他市の事例を参考に、イニシャルコストやランニングコストの価格面を考慮し導入に至りました。

継続的なサービス改善を目指す

――現在の運行状況や、成果、改善点などを教えてください

令和6年(2024年)度末時点での利用登録者数は約18,000人です。利用者数は増加傾向にあり、令和6年度は約15,000人で、利用の8割以上が70歳以上の方々となっています。登録者数、利用者数ともに増加傾向にあることから、鉄道や路線バスなどの既存の公共交通を補完し、交通空白地域における重要な移動手段を担っているものと考えています。

利用者数の増加に伴い課題となっていたのが、予約の取りづらさです。インターネット予約の場合、メンテナンスが終了する深夜午前2時からその日の予約を入れる利用者が多いため、電話予約が始まる午前8時では、希望の予約がなかなか取れない状況でした。こういった状況を受け、深夜2時に予約することによる利用者の身体的な負担を軽減するためにインターネット予約の受付開始時間を午前6時に変更しました。

また今年度(2025年度)は、「かわまる」を将来にわたって持続可能な交通サービスとするため、川越市交通政策審議会でさまざまな見直しの審議を行っているところです。

その中で、これまでの交通空白地域に加え、川越シャトルの運行便数が少ない路線を「交通不便地域」とし、「時間的な交通空白」を解消するために「乗降場設置基準」を策定したところです。

加えて、予約が取れない状況をさらに改善するため、現行制度の見直しや車両の追加導入の検討など、幅広く審議を行っています。

――今後の取り組みや利用者へのメッセージをお願いします

人口減少や高齢化が進み移動需要が多様化する中で、鉄道や民間の路線バス、タクシーといった既存の公共交通に加え、川越シャトル、デマンド型交通「かわまる」といった市内すべての公共交通が連携しながら、交通ネットワークの充実を図る必要があると考えています。

「かわまる」は、公共交通ネットワークの一翼を担う存在として、商業、医療、福祉といった他分野と連携しながら、交通空白地域における移動手段の確保に寄与していきます。

特に、利用者の8割以上が70歳以上であることを踏まえ、最低限の生活に必要な買い物や通院などの移動手段の確保や、移動を通じてより豊かで便利な暮らしが実現できるよう、持続可能なサービスにしていきたいと考えています。

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