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2026.01.20
市内全地区での本格運行目指す― デマンド型乗合送迎サービス「チョイソコがうら」(千葉県袖ケ浦市)
千葉県袖ケ浦市

千葉県中西部、東京湾岸に位置する人口約6万6,000人の市。臨海部には京葉工業地域の一翼を担う工業地帯が広がる一方、内陸部には「東京ドイツ村」などの観光施設や自然景観を楽しめる。東京湾アクアラインで都心から約1時間と好アクセスで、首都圏のベッドタウンとして若い世代や子育て世帯の流入も進んでいる。市内にはJR内房線が通り、袖ケ浦駅・長浦駅を中心に市街地が形成されている。また、アクアラインに加え館山自動車道、圏央道といった主要幹線道路へのアクセスに優れ、首都圏内外への円滑な移動を支える。
お話いただいた方
袖ケ浦市 企画政策部 企画政策課
副主査 戸田 直斗 様
海側・内陸の2エリアを網羅
――袖ケ浦市で運行されている「チョイソコがうら」について教えてください

戸田 様
「チョイソコがうら」はデマンド型の乗合送迎サービスです。利用者の方が乗りたい日時を予約すると、他の利用者と乗り合いながら、停留所間を移動できます。
利用には会員登録をしていただく必要があります。袖ケ浦市にお住まいの方で小学生以上の方であればどなたでも登録可能です。ただし、運転手が介助できないので、ご自身で乗り降りできる方という条件を設けています。一人で乗り降りができなくても介助者がいればご利用できます。
運行区域は市内全域です。病院や商業施設、地域のゴミステーションや公園などを停留所として設定しています。ご自宅まではお迎えできませんが、停留所から停留所への移動にご利用できます。停留所は現在550カ所余りで、令和8年(2026年)2月頃にはさらに10ほど増える予定です。新しい施設ができたり、ご利用者の要望に応じて増やしています。
運行日は日曜日と祝日を除いた月曜日から土曜日までで、運行時間は午前9時から午後5時までです。利用料金は、1回の利用につき一人当たり300円が基本ですが、エリアをまたぐ移動の場合は300円が追加となり計600円となります。小学生未満の方は登録はできませんが、会員の方と一緒なら無料で乗車できます。
サービス名は、システムの提供事業者である株式会社アイシン様のサービス名「チョイソコ」に、袖ケ浦の「がうら」を付けたものです。
――市域を2エリアに分けて運行しているのですね
市内には5地区がありますが、海側の3地区をエリアA、内陸側の2地区をエリアBとして区分しています。地域の特性もそれぞれ異なるので、距離も考慮した上で線引きしています。海側のエリアAには、市役所や袖ケ浦駅、商業施設などがあります。内陸側のエリアBには、東京ドイツ村などがあります。
袖ケ浦市の大きな特徴は、都心への交通利便性が高いことです。東京湾アクアラインの着岸地の近くにあり、JR線や高速バスを含め広域の路線が充実しています。ここ20年ほどで開発や区画整理が進んだこともあり、対岸や近隣の地域から子育て世代を中心に流入が見られます。一方、内陸側では、他の自治体と同様に高齢化が進んでいる状況です。
長浦地区を皮切りに市内全地区でスタート
――袖ケ浦市の交通課題やAIデマンド交通を導入した経緯について教えてください

広域の移動手段はある程度充実していますが、市内の移動となると公共交通では選択肢が限られます。そのため、公共交通における新しい移動手段としてデマンド交通の導入の検討が始まりました。
実は、「チョイソコ」を始める以前にも内陸の地域でコミュニティバスやデマンド交通を導入していた時期がありましたが、利便性などさまざまな課題があり定着しませんでした。そういった経緯がありつつも、改めて住民の方々から「デマンド交通を検討してほしい」という声が挙がっていました。
そのような中で、市と包括連携協定を結んでいた企業の方から「チョイソコ」をご紹介いただいたことが大きなきっかけとなりました。既に県内で導入実績があったことも後押しとなり、令和2年(2020年)ごろから検討が本格化し、令和4年(2022年)10月に現在のエリアAに含まれる「長浦地区」で実証実験をスタートさせました。
当初は、順次、対象エリアを拡大させる想定でしたが、ほかの地区からも「うちでもすぐに導入してほしい」といった声がありました。また、運転手不足などの影響でバス路線の維持も厳しくなっていた背景もあり、予定を前倒しして令和6年(2024年)10月に「昭和地区」「根形地区」「平岡地区」「中川・富岡地区」の4地区でも実証実験をスタートさせています。
実証運行は各地区で3年の実施で進めており、最初に実施した長浦地区は令和7年(2025年)10月に本格運行に移行しています。
サービスの運営主体は自動車販売会社で、地元のタクシー会社が運行主体として車両の運行を担う形をとっています。市は全体を統括する立ち位置です。
チョイソコでの運営実績がある会社に運営主体をお任せすることで、スムーズにデマンド交通をスタートさせることができたと考えています。
高い満足度と好意的な評価
――現在の利用状況や利用者の反応はいかがでしょうか

利用登録者は令和7年10月時点で約3,600人です。年代別には70~80代の利用が突出しており、女性の利用が多い結果になっています。
「乗合率」「収支率」「実際に利用した人数」をKPIとして設定しており、令和7年11月時点では乗合率が1.34人(目標1.40人)、収支率11%(目標14%)、実利用者の人数は約870人(目標1,220人)です。
利用登録者数は想定よりスムーズに伸びた印象です。登録を増やすために、地域の集会所に足を運んだり、イベントに合わせて説明会を行いました。若年層にも利用いただきたいので、YouTube用に利用説明の動画も作成しました。口コミでもサービスの認知が広がっていったと考えています。
サービスに対して好意的な声が多く、満足度はかなり高いと感じています。例えば「チョイソコのおかげで、外出するのが楽しくなった」「バイクに乗れなくなったので、すごく助かっている」といった声をいただいています。
また、寝たきりだった方が、チョイソコを利用するために停留所まで歩くことが目標となり、今ではしっかり歩けるようになったというケースもお聞きしています。単なる移動手段としてだけでなく、外出を促し、健康づくりにもつなげていただけるプラスアルファの要素もあると考えています。
地道な改善を積み重ね持続的な運営目指す
――サービスの今後についてうかがえますか
公共交通サービスはどうしても収支率が課題になりがちです。サービスの持続的な運営に向けて資金確保のためなら何でもやるべきという考え方で、「チョイソコがうら」ではスポンサーも募集しており、ご支援いただける企業様を増やしてきました。
また、サービスを改善していくためにも、より多くの方々に利用いただきたいと考えています。利用登録済みでも、1度も乗ったことがない方がまだまだ多いのが実情です。1度でいいのでまずは乗っていただいて感想をいただきたいですね。寄せられたご意見を今後のサービス改善に反映していきたいと考えています。
既に本格運行に移行している長浦地区に続いて、残りの4地区も令和9年(2027年)の本格運行を見据えています。さらに使いやすいサービスを目指していきたいと考えています。

