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2025.10.23

龍ケ崎市東部地域の新たな生活の足 AIオンデマンド交通「龍ケ崎のるーと」(茨城県龍ケ崎市)

茨城県龍ケ崎市

茨城県南部に位置する人口約7万5千人の市。北西部には牛久沼が広がり、古くからの自然景観に恵まれ、国選択・県指定無形民俗文化財の「撞舞」(つくまい)といった伝統行事が受け継がれている。都心へのアクセスの良さで人気を集めるベッドタウンで、主に4つの市街地に商業・サービス施設が集中している。JR常磐線龍ケ崎市駅を拠点に関東鉄道竜ヶ崎線が市中心部までを結び、路線バスやコミュニティバスが市民の足として機能している。

お話いただいた方

龍ケ崎市都市整備部都市計画課 公共交通対策室

副主査 仲村 尭之 様

市の東部地域の移動ニーズの受け皿に

――龍ケ崎市で運行されているAIオンデマンド交通サービス「龍ケ崎のるーと」について教えてください

仲村 様

「龍ケ崎のるーと」は、今年令和7年(2025年)の4月1日から本格運行をスタートさせたAIオンデマンド交通サービスで、龍ケ崎市の東部地域を運行エリアとしています。現在、セダンタイプとワゴンタイプの2両体制で運行しており、運行時間は午前7時半から午後6時までとなっています。事前予約はもちろんですが、即時予約にも対応しているのが大きな利点です。事前予約は7日前から可能で、通院や通学など、予定が決まっている方は早めにご予約いただければ、概ね希望通りに利用いただけます。

乗降ポイントについては、市の東側限定ではありますが、現在281カ所設けております。乗降ポイント間の利用であれば1乗車300円で、市民の方だけでなく市外の方でもご利用いただけます。

ご利用者の年代層は比較的、60歳以上の方が多いですが、10代から30代の若い世代の方からも利用いただいている状況です。現状、利用登録者は2,100人余りです。

――オンデマンド交通の導入が検討された経緯を教えてください

本格的にオンデマンド交通の検討を始めたきっかけとしては、現在の萩原市長が公約の一つとして導入の検討を掲げられていたことがあります。

一方、もともと市の担当レベルでも、地域のコミュニティバスの運行経費の負担が大きいことを課題として捉えていました。令和6年度実績で、コミュニティバスの収支率は約12%です。

本市は市街地が分散化しており、オンデマンド交通サービスの対象エリアである東部地域は、西部地域に比べて人口密度が低い地域です。市の西側にJR常磐線の龍ケ崎市駅があり、龍ケ崎市駅へと向かう移動は、主に民間事業者が運営する路線バスが担っています。市が運営するコミュニティバスはそれ以外の市内周遊の移動を担う形になっています。

その中で、対象エリアである東部地域のコミュニティバスは、1便当たりの利用者が2人以下という状況で、運行効率が悪いという問題がありました。市民の方から「ほとんど誰も乗っていない」などの声が、我々だけではなく、市長に直接届いていた状況でもありました。

市の担当レベルで持っていた課題感と、市長のビジョンを合わせた形で、実験的にオンデマンド交通の導入を進める運びになりました。本市にふさわしい交通モードかどうかを確かめるため令和4年度から実証実験に向けた検討をスタートし、令和5年11月から令和6年3月までの5ヶ月間、実証運行を行いました。

――オンデマンド交通を実施するにあたり、システムの選定はどのように進められましたか?

システムの導入は大きなポイントで、オンデマンド交通における専門的な知識や、どのような実績を重ねておられるかという点も判断材料として、プロポーザル方式で採用させていただきました。

価格面は当然ですが、市の構想にマッチしているかどうか、実施体制はどうかなど総合的に判断していますが、特にシステムにおける予約や利用の手軽さ、サポート体制が充実しているか、不測の事態が起きたときの対応などの観点で評価させていただきました。

乗降ポイントの設置に関するアドバイスがより具体的に示されていたり、本市の現状と交通課題に即した有効なアプローチが示された点から現在のシステムを採用させていただいています。

ユーザー評価高く利用登録者右肩上がり

――実証実験の結果から得られた利用状況や、利用者の反応について教えてください。

実証実験期間中の利用者は約2,200人でしたが、これは想定していた約1,000人を超えており、多くの方々に利用いただけたと感じています。1日当たりの利用者数が15人ほどで、平日と土曜日の利用者数が多くなっています。予約数は午前が11時半まで、午後は14時半から16時までが多くなっており、通院や買い物にご利用いただいているためだと思います。

予約方法に関しては当初、電話が多いと想定していたのですが、実際はアプリ経由での予約が多く、現状はアプリでの予約が6割、電話が4割です。他の自治体では、電話予約が8割に及ぶケースもあったのでポジティブに受け止めています。

利用者からの評価については、利用総数1,886に対して、アプリを通じて380件の評価がありましたが、そのうちポジティブな評価は369件と高評価率が高く、「車両が今どこにいるかが分かりやすかった」「時間に縛られず利用できて便利」「今後も利用したい」といったコメントも寄せられました。

一方で、「予約が手間」「運賃が少し割高」という声や、「JR龍ケ崎市駅まで乗れるようにしてほしい」「西部地域にも拡大してほしい」などの意見もいただきました。

利用登録者数は実証実験開始から右肩上がりで増えています。サービス開始に際して、市職員が運行エリア内のコミュニティセンターを中心に説明会を実施しました。1時間程度の説明会もあれば、コミュニティセンターの体操や卓球などの講座に合わせて行った15分程度の短いものもありましたが、60回以上実施しています。地域の方々の口コミの影響もあり、徐々に利用が広がったと思います。

持続可能な移動サービスとして

――本格運行に移行しての所感や利用者へのメッセージをお願いします。

本格運行への移行に伴い、乗降ポイントを見直したり、運行時間を朝夕で1時間ずつ拡大しており、サービスの利便性は増していると思います。ただ、いただいたご意見を必ずしも反映できるかというと、難しい面もあります。オンデマンド交通はあくまでコミュニティバスの代替サービスであり、路線バスやタクシー、私鉄といった民間サービスの補完として運行しています。

民間サービスとのすみ分けについてもご理解いただきながら、より多くの方々に利用いただくことで、将来にわたってこのサービスを維持できると考えています。目的に応じてさまざまな交通サービスを使い分けていただければと思います。

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