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2025.09.25
市内南西地域の交通の要として 住民の移動支える―乗合型AIオンデマンド交通「むらタク」(東京都武蔵村山市)
東京都武蔵村山市
多摩地域北部に位置し、約7万人が暮らす。戦後に自動車関連工業などで発展し、現在も中小製造業が地域産業を支えている。狭山丘陵や野山北・六道山公園などがあり自然豊かな土地柄が魅力。市内に鉄軌道はないが、バスや周辺鉄道との連携に加え、多摩都市モノレールの延伸計画が進められており、さらなる交通利便性の向上が期待される。
お話いただいた方
武蔵村山市都市整備部
交通企画・モノレール推進課
課長 湊 祥子 様
目次
市南西地域の約2,200人が利用登録しているオンデマンドタクシー
――武蔵村山市で運行されているAIオンデマンド交通「むらタク」について教えてください。
湊様:むらタクは、自宅と乗降場所を行き来することができる乗合型タクシーの交通システムです。市内循環バス(以下「MMシャトル」)の再編に伴い、MMシャトルの利用が困難となる南西地域の方を対象に、MMシャトルの代替の交通手段として導入されました。乗降場所は市内外に16カ所あります。月曜日から土曜日まで、ワンボックスカー2台で運行しています。料金は大人片道300円で、利用登録の上、電話かネットで予約してからご利用いただいています。
登録者数は令和6年度末現在で約2,200人です。ご高齢の方の登録率が高く、60歳以上の方で8割を超えています。
基本的には登録されている方がお使いいただけるのですが、登録していない方でも、登録者と同時かつ同じ場所で乗り降りする場合は利用可能です。また、介助が必要な登録者の介助者として乗る場合も利用登録は必要ありません。
市内循環バスの路線廃止に伴う代替の交通手段として
――むらタクの実証実験から本格運行に至るまでの経緯を教えてください。どのような課題があったのでしょうか?
むらタクの実証実験は平成25年から28年の3月末までです。終了後の翌4月から本格運行を開始しています。市民の代表者や運行事業者等で構成する地域公共交通会議において市内の公共交通のあるべき姿を検証し、日中時にMMシャトルの運行がなくなる市南西地域に、地域特性に合った新たな公共交通システムを導入することになりました。
むらタクの実証実験開始時に、4つのルートを走行していたMMシャトルのうち、2つのルートを統合したのですが、日中時にMMシャトルが走行しない地域が生じたため、代替として、その地域にお住まいの方が利用できるむらタクを導入したということになります。その後、令和4年4月から、MMシャトルの再編によってMMシャトルの運行がなくなった地域を対象に、むらタクの利用者登録可能エリアを拡充しました。令和6年度末現在で、利用登録可能なエリアにお住まいの方のうち約10%ほどが利用登録されています。
オンデマンド交通の導入は全国的にも早い方かもしれません。市内には鉄軌道がないため、交通の軸は路線バスです。路線バスが走行していない地域を補う交通としてMMシャトルがあります。市内循環バスの導入も先駆けでした。このように本市では、地域特性により交通サービスのあり方について検討が重ねられてきた背景があります。
利用者の意見をもとにサービス内容を改善
――実証実験を経てサービス内容を見直されましたか?また、現状の課題はありますか?
実証実験時は乗降場所を市内の公共施設に設定してスタートしていましたが、利用者の方々からのさまざまなご意見をもとに乗降場所を見直してきました。また、運賃の割引制度を設けたり、介助者や乗降場所が同一の方は利用者と同乗できる制度も、実証実験スタート時にはなかったもので、徐々に拡充してきました。令和4年4月からは利用者登録が可能なエリアを広げています。
課題について直接ご意見をいただくことはほとんどありませんが、時間帯によっては予約が取りづらいとの声がありました。むらタクは、市内の病院へ向かう際に利用されることが多いので、朝の通院時に予約が集中することが原因の一つと考えています。なお、目的地までの所要時間は、乗合の状況によるところが大きいのですが、ご利用者の方々には、乗合型のオンデマンドタクシーという運行形態をご理解いただけていることが多いと聞いています。
――運行事業者やシステム選定の基準、問合せ対応など運用面について教えてください。
運行事業者はプロポーザルで選定しました。運行管理を適切に行えるかどうか、事故発生時の対応が適切に行えるかどうかなど、法令遵守や安全運行への取り組みなどさまざまなポイントを審査させていただきました。
運行だけでなく、予約などの電話対応も運行事業者様にご対応いただいています。オペレーターの方の電話対応は非常に重要です。乗合型サービスなので車両の到着時間が多少前後する場合もありますが、予約の電話対応時に、オペレーターの方々が丁寧かつ柔軟に対応してくださっているので、多くのリピーターの利用者がいらっしゃるのだと考えています。
モノレール延伸を見据え、地域交通のあり方探る
――今後の取り組みについて教えてください。
市内の交通サービスのあり方については地域公共交通協議会で検討しています。協議会は昨年度に組織され、現在、地域公共交通計画の策定を主とするさまざまな協議事項について検討しています。今後、むらタクやMMシャトルの運行形態の再考や新たなモビリティの導入などにつきましても、協議会で協議・検討されていくことになります。
武蔵村山市では、2030年代半ばに開業を目指している多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面延伸を見据えたまちづくりが始まっています。武蔵村山らしさを守り、育てるとともに、人を呼び込み、人でにぎわう楽しいまちづくりのためにも、本市の公共交通もリスタートします。
むらタクにつきましても、利用者登録対象エリアや運行時間帯や曜日に対するご意見を踏まえ、より良い交通を考えていきたいと思います。