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2025.12.15
VTOLドローンで冬の遠隔点検実証実験 JR東日本など

東日本旅客鉄道株式会社新潟支社は、第一建設工業株式会社、東鉄工業株式会社、エアロセンス株式会社と連携し、VTOL(垂直離着陸)型ドローンを使った冬季の鉄道沿線斜面調査の実証を進めている。只見線と上越線で2025年に実施した試験では、JR東日本として初めてレベル3.5の自動飛行機能を用い、中距離区間の斜面状況を連続的に確認する取り組みを行った。これにより、従来ヘリコプターやマルチコプター型ドローンに依存していた調査手段に、新たな選択肢が加わった形だ。
豪雪地帯を抱えるJR東日本新潟支社では、降雪期の安全運行を確保するため、山間部の沿線斜面の積雪状況やなだれリスクを把握する調査を継続的に行ってきた。従来は社員による車両・徒歩調査に加え、広い範囲はヘリコプター、局所的な箇所はマルチコプター型ドローンで確認していたが、中距離区間を移動しながら調査する場合は時間と負担が大きいことが課題だった。今回のVTOL型ドローン活用は、この「中距離の冬季斜面調査の効率化」を狙ったものだ。
実証実験は、只見線大白川駅~上条駅間と上越線土樽駅~越後湯沢駅間で実施された。試験では、飛行中の映像を新潟市中央区にある施設管理部門など離れた拠点へリアルタイム配信する検証を行い、遠隔地からでも現地状況を即座に把握できるかを確認した。
使用した機体は、エアロセンス社製の国産VTOL型ドローン「AS-VT01K」で、国土交通省の「第二種型式認証」を取得したモデルだ。型式認証により、目視外飛行の申請手続きが不要となり、LTE通信を用いた遠隔操作と最大約50kmの自動飛行が可能になっている。ペイロードには固定カメラとジンバルカメラを搭載でき、只見線ではジンバルカメラ、上越線では固定カメラをそれぞれ用いたうえで、フロントカメラの映像をリアルタイム確認しつつ調査を行った。
取得データの活用面では、只見線の試験でジンバルカメラによる動画をもとに斜面の積雪状況を把握し、従来の点検手法と同等の精度を維持しながら調査時間を短縮できることを確認した。上越線では固定カメラで撮影した画像から3D点群データやオルソ画像を生成し、積雪環境下でのデータ利用の幅がどこまで広げられるかを検討している。さらに、位置情報付きのライブ映像を遠隔地へ配信することで、現地にいない担当者も対策検討に必要な情報を迅速に共有できることが示された。
今後の展開として、JR東日本新潟支社ら4社は、2025年度冬季の斜面検査でVTOL型ドローンを継続活用する方向で検討を進める。エアロセンス社の新型機「AS-VT02K」は、防塵・防滴性能IP43に対応し、小雨下でも飛行可能な仕様となる予定で、点検や災害調査など気象の制約を受けにくい運用が期待されている。また、機体が二分割式のコンパクトなケースに収まることから、JR東日本グループの列車荷物輸送サービス「はこビュン」での輸送検証も計画されている。新幹線を活用した速達輸送により、VTOL型ドローンを現場へ素早く届ける仕組みや、災害発生時の緊急輸送スキームの構築を見据えている。
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