鹿児島県薩摩川内市の離島・甑島（こしきしま）で、地域医療の課題解決を目指す「医療MaaS」の運用が始まった。これは、一般社団法人鹿児島地域医療介護ネットワークと、株式会社メドレーのグループ会社であるパシフィックメディカルが同市の支援のもと推進する「マルチ医療DX事業」の一環であり、離島特有の医療体制不足などの課題に対する新たなアプローチとなる。

甑島は人口約3,500人の有人離島で、過疎化と高齢化が進行し、住民の医療ニーズが高まっている。従来は医師が出張診療所を巡回していたが、医療MaaS車両の導入により、診療所や医療機器の維持コスト削減、移動困難な患者への自宅近くでの診療が可能となる。車両にはバイタル計測機器を搭載し、オンライン診療時には医師の指示で看護師が一部処置を行う体制も整備されている。

この取り組みの技術的な核となるのが、地域医療情報連携ネットワーク「かごネット」だ。県内140施設が参加し、患者の診療履歴や処方情報などをクラウド上で一元管理することで、救急搬送時や来院時に迅速かつ適切な医療提供が実現。重複検査や重複処方の防止にも寄与している。

今後は、看護師が医療MaaS車両で巡回し、オンラインで医師と連携する診療体制の拡充を目指す。また、甑島の診療所と本土の専門クリニックや総合病院との連携も強化され、慢性疾患患者の本土通院負担軽減や、離島からの専門的医療アクセス向上が期待されている。

市民向けの健康管理アプリ「かごマイカルテ」も展開されており、日々のバイタルデータや検査・処方内容の確認、家族との情報共有が可能。これらの複合的なデジタル施策により、地域住民の健康維持と安心な暮らしを支える基盤が強化されている。

薩摩川内市長は、「1地域・1患者・1カルテ」の実現による質の高い医療提供と、医療MaaSによる持続可能な医療体制の構築に期待を寄せており、今後のさらなる活用と発展が注目される。

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